2010年 06月 05日
Canon FP 分解修理
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キヤノンFPのカタログから引用すると

『ラフにガッチリお使いください タフにシャープに写す1眼レフです 実力あるカメラとして人気最高潮に達した キヤノンFXの機能的エッセンス 1眼の機能をことごとくそなえた実戦型です 全世界のカメラマンにキヤノンの技術がお届けする 代表的な〝現代のカメラ〟です』

だそうです。文面からすると、どんだけ凄いカメラかワクワクしちゃいますが、外観からしても凄そうな雰囲気はないし、いじってみても特別なものはありません。さらに分解してみると、内部はFXの部品と共通ですし、露出計を取り除いてお安くしたカメラといった感じで、当時買った人は少々がっかりしたかも知れないですね。

さて今回はそのFPの分解修理です。だいぶ前から1台所有しておりましたが、縁あってもう1台私の手元にやってきました。チェックするとやはりジャンクレベル。いろいろ不具合があります。2010年GWに分解を始めましたが、その後まとまった時間が取れず今まで放置しておりまして、昨日ようやく組み上げました。

NG点を挙げておきましょう。

(1)低速側シャッターまったく動作せず
(2)巻き上げするとミラーアップ復帰する
(3)セルフタイマー動作せず
(4)モルト全て不良

(5)シャッター幕カビ多い
(6)ボディへこみ腐食汚れ多い
(7)フイルムインジケーター少し傷み

思い出しながらなので確かこんな感じだったと思います。とりあえず(5)は漂白剤で丁寧に除去。完全には落ち切りませんが、匂いはだいぶ除去できました。(6)はクリンボーイや張り皮は剥がしてアクロン浸けでだいぶ綺麗になりました。(7)は凸凹を爪で矯正して目立たなくしました。

では赤文字の(1)~(4)について。画像は組立時に撮影したものです。多少部品の付き方が違うかも知れませんがご容赦ください。

まずはトップカバーを外すのですが、その前に、巻き上げレバー、シャッターダイアル、巻き戻しクランク、セルフタイマーレバーを外し、さらに張り皮を剥がし、裏蓋を外します。基本的には記述した順になりますが、その人のやりやすい方法、順番でOKでしょう。

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裏蓋。予めセルフタイマーをチャージしてセルフタイマーレバーを外し、さらに張り皮を剥がしておきます。裏蓋を外します。裏蓋を外したらシャッター幕を傷めないように、厚紙などを貼り付け養生しておきます。フィルム室とヒンジ部のモルトを除去し貼り替えておきます。

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巻き戻しクランク部。クランク部根元にある内側のスリ割りは工具当て回します。特別難しい部分はないでしょう。小さなリングがありますので紛失に注意しましょう。

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巻き上げレバー。カニ目穴に工具を差し込み回しますが、最初はゴムアダプタでチャレンジしてみましょう。工具を当てると何かしら傷が付きますので。回す方向は一般的なもので順ネジです。

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シャッターダイアル。中心部のカニ目に工具を差し込み回します。空振りに注意しましょう。

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トップカバー。アイピースの両脇のビス2本、巻き上げ側の肩側面の1本、正面のCanonロゴ下の1本を外し、カバーをゆっくり持ち上げます。外したらシャッターダイアルと巻き上げレバーを仮止めしておきます。それとトップカバーのシャッターボタン内に差しこまれた部品がありますので、紛失しないように確保しておきます。組立時は差し込むのを忘れずに。

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ボトムカバーとエプロン。3本のビス、スリ割りに工具を当て裏蓋開閉レバーを外すとボトムカバーが取り外せます。

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ミラーボックス。セリフタイマーレバー(カニ目は順ネジ)、ミラーボックス内下の遮光カバーを外し、前板のビス6本を外すと、前板ミラーボックスが取り外せます。

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セルフタイマーのジョイント部分。これを確保します。組立時は、セルフタイマーをチャージし(方法はジョイント1個をのせてマイナスドライバで回します)画像のようにジョイントを組んだ上、前板をのせます。

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シャッター上のミラーボックスのモルト。これを除去し貼り替えます。サイズは画像の通りですが、個体によって違うかも知れませんので、古いモルトを除去する際に、計っておくとよいでしょう。

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ファインダーブロック。リズムとスクリーン枠をおろします。スペーサなどありますので、元通り組立できるように記録しておきましょう。

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スクリーン枠。枠からコンデンサーレンズとスクリーンを取り出しますが、コンデンサーレンズとスクリーンの間に汚れがある場合にのみ行います。綺麗でしたらそのままにしておきます。コンデンサーレンズは縁が破損しやすく、スクリーンは傷が付きやすいです。枠は古いモルトが付着している場合は綺麗に取り除いておきましょう。

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ミラーボックス内のモルト。四方にモルトが貼ってあります。綺麗に取り除いて貼り替えます。

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セルフタイマー、スローガバナー、シャッター幕。これを取り外します。セルフタイマーは注油でも解決せず、FXからの移植で対応。スローガバナーはベンジン洗浄後注油。テンション軸に注油。シャッター幕前のカバーを外し幕のカビを除去(漂白剤などで)しました。この状態でのシャッターの動作は①押し②を操作すると確認できます。

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シャッターの調整。ミラーボックスを組んでシャッターの動作を確認します。高速側はCRTモニターの画面前でシャッターを切って確認します。低速側はそのままシャッターを切りますが、ミラーが上がりっぱなしになったり、止まってしまったりしないように調整します。先幕、後幕それぞれ少しずつ調整。基本的にはテンションを強める方向(反時計回り)で行うことになるでしょう。

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以上で最初に挙げたNG点を改善できました。基本的な構造はFXと変わりありませんし、露出計がないのでその部分で神経を使わなくて済むので気が楽です。分解修理の練習にも良い機種ですね(そう個体数が少ないのが難点ですけど)。

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実は今回FPを入手したのは、この部品を再生する目的もありました。所有のFPはこの部品が脱落して無かったのですね。とりあえずビスで代用していたのですが、やっぱりオリジナルに近いものが良いと思いまして。

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方法はこのプラリペアというものを使いました(自動車部品屋さんで売ってます)。手順は簡単、熱湯に型取り剤を入れ柔らかくし部品を押しつけます(ここが仕上がりを左右します)。冷やしたら、プラスチックの粉をふりかけ、溶剤をかけて固まるのを待ちます。しっかり固まったら取り出し余分なバリを切り落とし形を整えます。中央に穴開けし、同ピッチのビスで固定して完成です。色が違いますがそれらしくなりました。ちなみに白状すると1回ではうまくいかず、型取りや整形に失敗し4回目でやっと満足できるものになりました。

by fllenswaku2ii | 2010-06-05 09:30 | FP Repair | Comments(6) | OhBeHello
Commented by 俊さま at 2010-06-05 20:43 x
こんばんは。
ここまで分解するとはすごいですね。私は不器用なのでバラすなんて無理無理です。
Commented by OhBeHello at 2010-06-05 21:43 x
俊さま、こんばんは。ありがとうございます。分解をやり始めたのは若いころ新品で買ったMXのプリズム腐食を直そうとジャンクのMXを買って分解したのがきっかけです。移植でMXが直って嬉しくて、その後いろいろなカメラやレンズに手を出しました。が、失敗も多く経験しました。バネやボールが飛び、部品破損にフレキを切断、レンズを落として割ったり、ビスの頭を舐めたり、並べた部品のトレイをひっくり返すなどなど、すごいでしょ(笑)。
Commented by karts2 at 2010-06-06 06:57
おはようございます。
いつもながら鮮やかな手さばき・・・凄いの一言です。FPに手を伸ばすことになった際の良いお手本になります。こうやってきっちりとした形で記録に残すことは大事ですね。私も含めて後進の参考になります。

自分もメンテしますが、いつも散らかった状態での作業が多いので、もう少し整理した状態でせねばと反省です。(ネジなくすはずですね)
Commented by OhBeHello at 2010-06-06 10:46 x
karts2さん、こんにちは。いやいや、分解中もヒヤッとしたこともありました。しかし分解も一ヶ月も間があくと忘れちゃってよくないですね。自分で書いたFXの記事を参考に組み立てました(笑)。分解記事、とりあえず機会があったら参考にしてみてください。

横着して作業するところだけスペースを作って取りかかったりすると、分解した部品の置く場所に困って、またどこかにスペースを作って、なんてことをしてると、部品の紛失などの最悪な事態に陥ります。今も作業台は工具やら何やらが散らばった状態です。整頓しなければ。
Commented by ひろちゃん at 2010-07-15 15:45 x
初めまして♪
父のFPを譲り受けました
40年以上放置されていたのですが
モルトの劣化以外は問題ないようで…
モルトの位置も確認しないで除去してしまったので
モルトの位置やサイズ、とても参考になります
ありがとうございました♪

FPはFXに露出計が要らないと言うニーズから
作られたらしいので内部はFXと変わりないそうです
Commented by OhBeHello at 2010-07-15 20:20 x
ひろちゃんさん、はじめまして。ご訪問いただき、また記事を参考にしていただきありがとうございます。お父上さまのFPを譲っていただいたそうで、なんとも羨ましいです!とすると、お父上が最初のユーザー、これはすばらしいです。40年以上も稼働していなくても、モルト以外はOKなようで保存環境が良かったのかも知れませんね。

そうですね「FXに露出計が要らない」と要望があったようですね。今、改めて資料を読み返してみると、「・・・内臓露出計を好まないプロ写真家を対象にして、かつ外付け式の露出計を用意して普及価格でアマチュア写真愛好家にも受け入れられるようにと開発された機種・・・」とありました。プロの要望を受けてそうしたのかと思いますが、FPをプロ機として扱うは、ちょっとかわいそうですよね。ひろちゃんさんのFP、大事に使ってあげてください。


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